高血圧症

高血圧症は脳心血管病発症の最大の要因です。
血圧を測り、真面目に治療しましょう!

厚生労働省『健康日本21』HPより引用

高血圧症とは、安静にしているにもかかわらず慢性的に血圧が高い状態が続いていることを指します。塩分の摂り過ぎ、喫煙、飲酒、運動不足、肥満など不摂生の積み重ねが高血圧の主な原因です。
高血圧を放置して動脈硬化や心筋梗塞、脳梗塞などの合併症を引き起こしてしまうよりは、薬を飲み続けることで血圧を下げ、合併症や他の病気になってしまうことを防ぐことが大切です。ただし質の良い管理ができていなければ『片手落ち』です。質の良い管理ができているかは、定期的に血圧を測定し、自身の今の状態をしっかりと把握、記録していただくことが大切です。ですから、高血圧の治療は医師と患者さんの共同作業なのです。
また睡眠時無呼吸症候群やホルモン異常など別の病気が原因で高血圧になっていることもあり、『薬を飲んで下がればOK』でなく、原因を突き止め、原因に対する治療を並行して行うことも重要です。

「血圧」の意味を知り、変動を診る

  • 『血圧』は、心臓や血管の健康を測る重要な指標です

    心臓はドキドキと、収縮と拡張を繰り返し、大動脈を通じて全身のすみずみに血液を送り出しています。この時、血液が心臓から勢い良く流れ出て血管の壁にかかる圧力が血圧です。血液を送り出す心臓の働きが落ちれば血圧は下がるし、血管が細くなったり弾力性を失えば上がります。つまり血圧は、心臓や血管の健康を測る重要な指標なのです。

    水道水のホースをイメージしてみてください。ホースの先を細めると、すごい勢いで、水が出ます。血圧が高いということは、心臓が血液を送り出す(脈を打つ)たびに、その勢いが血管の中で起こっているのです。 正常血圧である収張期120mmHgでは1m63cmの水を吹き上げているのですが、収張期血圧が180mmHgとすると、2m45cmも吹き上がる強さで、血管の内膜に圧力がかかっているのです!

  • 1日の中で、血圧は常に変動しています(概日リズム)

    血圧は、たえず変化しています。1日という長さで血圧の変化をみると、起床前からその日の活動に備えるように上がり始め、日中の動いている時間帯では高くなり、夕方から夜に活動しなくなると下がり、睡眠中はさらに低くなるという基本的なカーブを示します。これを血圧の日内変動(概日リズム)といい、日毎にそれが繰り返されることになります。ただし、動いている間でも、運動やストレスなどに応じて変化します。日内変動のカーブは人によって異なり、同じ人でも日によって異なります。

  • 血圧変動には、自律神経と動脈硬化が関係しています

    暖かい時、リラックスしている時は血圧は低く、寒い時、活動している時やストレスがある時、食事の直後や入浴の直後でも血圧が高くなりやすいです。肉体労働・運動・歩行・食事などで血圧は上がり、睡眠中や排尿などで血圧は下がります。精神的な興奮やストレスなども血圧を変動させる要因になります。ちなみに夜に眠れないと、交感神経が高ぶったままになってしまう為、夜の血圧が下がらないだけでなく、朝や翌日の血圧まで高くなってしまいます。また、眠れないというストレスが血圧に悪影響を与えることもあります。

    北海道心臓協会より引用

    つまり血圧日内変動には自律神経が大きく関係しているのです。季節や時間帯によって血圧は変動するため、家庭に血圧計を用意し、治療中も継続して計測するようにすると良いでしょう。
    また、血管が硬くなって弾力性を失った動脈硬化の状態では、血圧の変動は大きくなります。ちょっとしたストレスで『血圧サージ(ジェットコースターのように血圧が乱高下すること)』が起こり、普段の血圧が正常の方でも動脈硬化や心臓肥大が進んでしまいます。また動脈硬化が進めば進むほど、血圧変動は激しくなります。

高血圧のタイプとその原因、リスクもいろいろ

  • 高血圧の原因は?

    動脈の血圧が心臓の収縮により最高に達した時を「最高血圧または収縮期血圧」、心臓の拡張により最低に達した時を「最低血圧または拡張期血圧」と言います。
    高血圧には様々な段階がありますが、一般的に収縮期血圧(最高血圧)が140mmHg以上、拡張期血圧(最低血圧)が90mmHg以上であれば、治療が必要な高血圧であると言えます。
    高血圧の原因には、塩分の摂取過多、緊張してストレスが加わる、肥満などがあります。また、睡眠不足も大きく関連してきます。今の生活環境が自律神経に大きく影響を与えて、血圧を上げているわけです。遺伝的な相因なども影響していると言われていますがやはり、今の生活習慣が大きな原因です。 すなわち食生活、運動、そして睡眠状態、この3つの要因で血圧が上がってくることになります。さらには加齢、年齢を重ねると血圧は上がる傾向になります。

  • 高血圧は無症状だから、治療しなくてもいい?

    よく「頭が痛いのは高血圧のせいではないか」など、いろいろなことが言われますが、基本的には高血圧に自覚症状は一切ありません。血圧とは、血管を垂直に押す圧力のことです。従って、圧力がどれだけ高くても、脳梗塞になったり、心筋梗塞になったり、血管が破れるということがない限り、血管を押す力がどんなに強くても症状というのは出ません。すなわち、それだけ恐ろしいと考えてください。 症状がなく過ごしていても動脈硬化ができ、ある日もの凄い圧が加わって、それが破裂した場合、血液がそこで固まることがあります。それが脳卒中、心筋梗塞の引き金になります。 血圧が高いと次に起こるのは不整脈(心房細動)、さらに心不全につながる、これが怖いところです。

  • 仮面高血圧、なかでも「早朝高血圧」は治療が必要です!

    高血圧の人に限らず一般の人でも、病院や診療所で測ると、家庭よりも高い数値が出ることが多いことがわかっています。家庭ではリラックスして測定できますが、病院や健診では緊張して、血圧値が上がってしまうのです。診察室で測定した血圧は「診察室血圧」または「随時血圧」と呼ばれ、家庭で測る「家庭血圧」に比べると、収縮期血圧で20~30mmHg、拡張期血圧で10mmHgも高くなる場合もあります。

    名古屋ハートセンターHPより引用

    日本高血圧学会では、家庭血圧が135/85mmHg以上を高血圧とし、125/80mmHg未満を正常血圧の基準として採用しています。診察室血圧が、140/90mmHg以上で高血圧、家庭血圧が135/85mmHg未満で高血圧でない場合、「白衣高血圧」と呼ばれます。病院で白衣を着た人に測ってもらうと「高血圧」になるためです。逆に家庭血圧が高血圧で、診察室血圧が高血圧でない場合、「仮面高血圧」または「逆白衣高血圧」と呼ばれます。白衣高血圧は積極的に治療せず、経過を見る場合が多いですが、仮面高血圧、中でも「早朝高血圧」は注意が必要です。早朝高血圧は持続性高血圧よりも心血管系の病気になるリスクが高いので、治療が必要となります。仮面高血圧は、仕事や家庭などで精神的ストレスを抱えている方、ヘビースモーカーなどでみられることが多いので、心当たりのある方は診察室血圧と家庭血圧の数値を比べてみるとよいでしょう。やや緊張した診察室での血圧は少し高めの方がほとんどです。

血圧が大きく上がる、早朝に血圧を測るべし!!

心筋梗塞でも脳卒中でも起こりやすい時間帯というものがあります。通常、夜は発症頻度が少なく、朝に頻度が増えます。脳卒中、心筋梗塞ともに朝起きてから1時間以内は一番リスクが大きいと言われています。ちょうどその間に血圧が大きく上がる時間帯と重なります。つまり、1番リスクの高い時間帯は朝なのです。また睡眠がきちんと取れていない時も、朝の血圧に影響します。ですから、朝の血圧をチェックすることがとても大切なのです。

いいお医者さんnet.HPより引用

<測定方法>

早朝血圧(Morning)

朝起きてから1時間以内(2~3分座って安静にしてから)
食事をしたら血圧は変動してしまうので食事前
くすりは飲む前、膀胱が張っていると交感神経が緊張しているので排尿後

就寝時血圧(Evening)

寝る前

寝る前と朝1時間以内を含む1日2回測定してもらうのが、スタンダードな測定法です。 1週間のうちに少なくとも3日以上測定して、その値を医師のところへ持って行って頂くと効果的な治療を受けられると思います。

  • 朝と夜の血圧差が大きい人は、脳卒中や心疾患のリスクが高くなります!

    いいお医者さんnet.HPより引用

    心臓は1日に約10万回鼓動しているのですが、そのたびに圧力がかかり、血圧が上がり下がりします。血圧は毎回、10万回すべて違いますが、リスクの評価は平均値で診断します。平均が、自宅で計測する場合は上が135、下が85です。それを超えた時に高血圧と診断することになります。 しかし、現在では平均だけではなく、変動ももう一つの重要なリスクと言われています。例えば、平均値が同じ人でも、変動の大きい人のほうがよりリスクが高いということになります。血圧を見る上において、一つは平均、もう一つは変動幅、この両方を見る必要があります。早朝血圧(Morning)と就寝時血圧(Evening)の差(頭文字をとってME差)が大きい人は脳卒中や心疾患のリスクが高くなるといわれています。

高血圧症は典型的な生活習慣病です。
まずは生活習慣を見直し、降圧療法を正しく受けましょう!

  • まずは肥満の予防。食生活を見直し、運動不足を解消しましょう!

    いいお医者さんnet.HPより引用

    高血圧は加齢が大きな原因ですが、加齢現象をいかに止めるかということは一番難しい要因になります。一方、改善ができることとして一番大切なことは肥満の予防です。肥満が進むと心拍数が上がって、そのあとに血圧が上がります。従って、メタボリックシンドロームや肥満になった時には、今から血圧が上がり始めるぞというサインと考えるべきだと思います。その時点では肥満を抑制するために、食事と運動を改善してください。これが非常に大事と言われていますが、それに加えてもう一つは睡眠状態というものがあります。睡眠時間が短くなると食欲が増すようなホルモンが出るとも言われていて、肥満の原因になることがあります。毎日ぐっすり眠ってください。ぐっすり眠ることでうまく運動もできるし、体重も下がってきやすいと言われています。

    運動療法
  • 高血圧と減塩

    もうひとつ、減塩も予防と改善につながります。体質として「食塩感受性」という言葉がありますが、同じだけ塩分を摂っても、血圧が上がりやすい人と上がりにくい人がいます。
    塩分によって血圧が上がりやすい人、それを食塩感受性と言います。すなわち、体の中から塩分を排泄しにくいという体質です。それには、何が関与しているかというと、一つは肥満です。もう一つは、交感神経の亢進、ストレス、不眠、などが関連していると言われています。従って、ストレス、不眠、肥満、これらを改善することによって、体の中から塩分を排泄しやすいような状況にし、さらに食事でも減塩を一生懸命頑張ることです。それによって、予防と改善が容易に達成しやすくなります。 摂取塩分を減らすだけで、減塩効果を期待するのは少し難しいですが、カリウムの多い食事も加えるとよいと言われています。カロリーを減らして、減塩して、そしてなおかつ繊維類とカリウムの多いような食事を心がけることがよいと思います。 カリウムの多い食事の例としては、海藻類、果物、緑色野菜などがあります。これらを併せて摂りながら、減塩、食事と運動、睡眠をしっかり管理していくことが大切です。

    食事療法
  • 高血圧の薬物治療

    いいお医者さんnet.HPより引用

    改善が必要な高血圧は140超えた段階ですので、ここから血圧を下げて正常に戻すというのは至難の業です。基本的に、食事と運動と睡眠、この3つを正しく改善するようにして、それと並行して薬を飲む、降圧療法を正しく受けるということが大切です。
    基本的には糖尿病、慢性の腎臓病、そして心血管系、脳卒中、心筋梗塞を起こしたことのある方というのは、通常の血圧がただ単に高い方よりもリスクが高いといわれます。そういう方は、レニン・アンジオテンシン系というホルモンを抑制するような降圧薬を飲んでもらうことが最初の第一歩になります。
    このような既往症によるリスクは少ないが、例えば、血圧がものすごく高い、高齢である、という場合は、カルシウム拮抗薬からスタートすることになります。通常、降圧薬としては、レニン・アンジオテンシン系の抑制薬(ACE阻害薬、アンジオテンシン受容体の拮抗薬など)、もしくは、カルシウム拮抗薬、このいずれかでスタートするという形になります。 これで上手くいかなかったら、少ない量の利尿薬(体の中で塩分を排出する)を追加して3つ組み合わせて治療していきます。その組み合わせで約9割以上の人に効きます。

  • 薬を飲んでも血圧が下がらない・・・

    通常の薬物治療でうまくいかない場合、それを治療抵抗性の高血圧と定義します。コントロールができない方に対しては原因を探ることになりますが、一番頻度として多いのは睡眠に関係している病態で、特に睡眠時無呼吸症候群です。 他には腎臓病や、腎臓の血管が細くなっているために血圧を上げるようなホルモンが出ていることがあります。また、ナトリウムの排泄を妨げるホルモンを分泌する腫瘍があるなど、何らかの原因があって血圧が上がる、二次性の高血圧の方がいらっしゃいます。このような場合には通常の治療でコントロールができませんので、原因に立ち戻って精査をすることになります。 薬をのんでいても血圧が下がらない、あるいは安定しない方は当クリニックにご相談ください。

    睡眠時無呼吸症候群

高血圧を甘くみないでほしい

高血圧は一旦薬を飲み始めるとずっと一生飲まなくてはいけないのではないかと心配されて、なかなか踏み切れない方がおられます。さらには安静にして自分では調子のよいときの血圧だけを測定してしまったり、大目に見たりします。1回目160、2回目140、3回目120とすると、120がでるから心配ないと自己判断してしまいますが、重要なのは平均値を取ることです。平均の血圧が高い場合には、怖がらず、ごまかさず、薬を規則正しく飲むことが大切です。それに加えて、生活習慣を改善することで治療の効果も格段に上がります。ダイエットや禁煙が成功すれば、薬を減らすことができます。