運動療法

運動療法の必要性
65歳以下は生活習慣病(メタボ)の予防、
75歳以上はサルコペニアの予防のため『運動』はとても重要です!

  • 健康長寿ネットHPより引用

    高血圧や脂質異常症、糖尿病、そしてこれらの症状が組み合わさったメタボリックシンドロームなどの生活習慣病の原因として肥満、運動不足が挙げられます。豊かな食生活、デスクワーク中心の仕事など、生活スタイルの変化で活動量が減少しています。特に60歳未満の就労世代の7~8割が、運動習慣を有していません。予防するのに大切なのは運動です。
    特に運動耐容能(全身持久力)の高さは、高血圧や糖尿病などの生活習慣病の存在よりも強く寿命の長さに影響を与えることも報告されています。

    健康長寿ネットHPより引用

    全身持久力は年に1%程度ずつ低下、閉眼片足立ちでみる平衡機能は年齢とともに直線的に低下してくることがわかります。男女とも、60歳以上の運動習慣者は増加しています。しかし努力をしていても、65歳以上では急速に体力は落ちてしまうため、年を取るほどより努力することが必要です。

  • 運動は心臓によく、怠惰は疾患を招く

    心臓病は心臓が悪くなるだけの病気ではありません。心臓とともに、体全体の調子が崩れるのが心臓病なのです。手術などの『心臓の治療』と、運動や食事療法などの『全身の治療』の両方を行って初めて完全な治療となります。
    特に運動療法は生活習慣病の改善や予防となるだけでなく、動脈硬化(=血管の老化)や心臓病の改善ないし予防まで期待でき、病気に対する抵抗力も高めます。
    当院では心臓リハビリテーションなど、内科疾患に対する運動療法を積極的に行っています。運動の仕方を学んでいただきながら、生涯運動を続けられる体力の基礎作りをお手伝いさせていただきます。

「病気にかかる前よりも若く元気に」、これを達成できるのが心臓リハビリテーションです。
心臓リハビリテーションとは

  • 手術は命を救うもの、リハビリは人生を救うもの

    心筋梗塞などの心臓病は命に関わる病気です。まずは手術や治療により命を救うことが先決ですが、手術で終わりではありません。その後のリハビリも重要です。
    かつて心臓病があると『安静が第一、無理をしないように』といった指示がでることが多かったのですが、過剰な安静はかえって身体の機能低下をもたらすことが明らかにされ、運動療法が積極的に行われるようになりました。
    心臓リハビリテーションは、効果的な運動を行うことで、心臓だけでなく全身の筋肉を鍛えていくことを目標としています。心臓に負担にならないぎりぎりをめざし運動を続けることで、日常の生活でも楽に活動できるようになります。当クリニックでは心臓病を患う前より元気になってもらうための運動プログラムを提案、実施します。

  • 心臓リハビリテーションの効果

    • 運動能力・体力の向上により、日常生活で症状が出にくくなる
    • 筋肉量が増えて楽に動けるようになり、心臓への負担が減る
    • 心臓の機能(調子)が良くなる
    • 血管が広がりやすくなり、身体の血液循環がよくなる
    • 動脈硬化が進みにくくなり、既に出来ているプラークが小さくなる
    • 自律神経が安定して不整脈の予防になる
    • 血管が広がって高血圧が改善する
    • インスリンの効きが良くなって糖尿病が改善する
    • 脂質異常症の改善・予防(HDLコレステロール↑、中性脂肪↓)
    • 仕事や家庭生活、社会生活の満足度が高くなる
    • 心臓病患者に多い精神的不安定(うつ状態)を改善する
    • 寿命が伸びる

高齢の心臓病患者さんこそ、運動が必要
「心臓リハビリテーション」でサルコペニアを防ぐ

  • 日本心臓財団HPより引用

    サルコペニアは、ギリシア語で「筋肉」を意味するサルコ(sarco)と「喪失」を表すペニア(penia)の造語で、筋肉量が減少して、筋力や身体機能が低下している状態(筋力低下)のことをいいます。サルコペニアを進める原因としては、加齢のほか、長期安静による筋萎縮、栄養不良、心不全やがんなどの慢性疾患があります。
    高齢の心臓病患者さんは、入院中、長期間安静にしていたり、ふだんからほとんど運動を行わない生活を送っているため、筋力が低下し、サルコペニアが進行しやすいため、注意が必要です。特に心不全とサルコペニアは互いに悪影響を及ぼしあうため、自立した老後を送るためにも、心不全が軽症なうちから、適切な運動を行いサルコペニアを予防することが重要です。

  • 安静にしていると、どんどん歩けなくなってしまう可能性があります。適切な運動を行うことが大切です!

「心臓リハビリテーション」で寿命を延ばす

  • 出典:Myers JN N Engl J Med 2002

    身体活動量を多くすることや運動をよく行うためには、より強度の高い運動を長い時間行うことのできる「全身持久力」が必要です。 最大酸素摂取量(METs)は全身持久力を表す指標で、健常者はもちろん、心筋梗塞や心臓手術後の患者さんでも最大酸素摂取量が高い人の方が長生きすることが研究結果で報告されています。

  • 寿命を延ばすカギとなる「全身持久力」を高める

    北海道心臓協会HPより引用

    全身持久力は有酸素運動能とも呼ばれ、空気中に存在する酸素を利用して体内(おもに骨格筋)でATP(筋肉を動かす時のエネルギー源となる物質)を産生できる能力を意味します。
    酸素摂取量は運動が強くなるほど増加し、その最大値が「最大酸素摂取量」です。
    最大酸素摂取量が高ければ高いほど全身持久力が高く、また長命となります。
    最大酸素摂取量は、加齢とともに低下しますが、身体活動量を高く保つことによりそれを抑えることが可能です。
    呼吸-循環-代謝の総合的な有酸素運動能が高ければ、活動筋の要求に応じた酸素を十分に供給することで効率よくATPを産生でき、より長く運動を持続することができます。これを規定するのは骨格筋への酸素輸送量と骨格筋での酸素利用能です。

    北海道心臓協会HPより引用

    つまり全身持久力は、肺、心臓・血管、筋肉がきちんとうまく連関して働く総合力で決まります。上図は『Wassermannの歯車』と呼ばれ、いずれか一つでも歯車が狂う(機能異常が出る)と運動耐容能が低下します。心臓の働きが低下しても、全身の筋肉を鍛えることで毛細血管を発達させ、血管の働きが良くなり、運動耐容能が高まります。

心臓の働きが半分になっても体全体を鍛えれば、
寿命と元気さは普通の人以上になれます

  • 出典:Belardinelli R,et al:Circulation,1999,99,1173-1182

    心不全は、心機能低下をもとに自律神経異常、骨格筋機能異常、血管収縮、呼吸の異常などが加わって、「動悸」「息切れ」「疲れやすさ」などの症状が出現します。そのため心臓だけを治すのではなく、全身を治療する必要があります。心不全の場合、運動療法を適切に行うと、心不全悪化による再入院率や心事故回避率が減ることが研究結果で報告されています。
    心臓リハビリテーションは、骨格筋や血管の働きを改善して、心不全を総合的に治療する唯一の治療法です。心臓の働きが半分になっても体全体を鍛えれば、十分心臓をカバーしてくれて、寿命と元気さは普通の人以上になれます。

  • イラストの出典:安達仁著「眼でみる実践心臓リハビリテーション」より改編

    心臓の働きが50%に低下しても、心臓リハビリテーションをしっかり行って骨格筋や自律神経機能を150%に引き上げれば体全体の能力(運動耐容能)は100%を維持できます。ところが心臓病になっていなくても普段全く動かないために骨格筋の働きが50%に低下していると、運動耐容能は80%になってしまいます。寿命やQOL(元気さ)を規定しているのは心臓の働きではなく運動耐容能であるため、心臓病になっても心臓リハビリテーションを頑張れば心臓病になっていない人よりも元気に長生きすることができます。

平和通ハート内科の心臓リハビリテーションでは、
患者さん一人ひとりに向き合います!

  • 安全に配慮した
    専用のリハビリ室

    無線の心電図モニターを付けていただき、理学療法士と看護師立ち合いのもと安全に配慮したリハビリを実施しています。不安なことや分からないことは、すぐに相談できる環境です。AEDも設置しています。

  • 理学療法士が
    マンツーマンでレクチャー

    大勢の患者さんがいる中でリハビリを行う施設が多いのですが、当院では理学療法士が患者さん一人ひとりに合わせた運動処方、きめ細かいマンツーマン指導を行います。

  • 管理栄養士による食事指導で
    トータルサポート

    筋肉を増やすには食事も重要です。栄養士との面談で、食事内容の見直しも行います。医師・看護師・理学療法士・管理栄養士による「チーム医療」で、患者さんの人生に寄り添ったより良い医療をご提供します。

心臓リハビリテーションが対象となる疾患

    • 狭心症・心筋梗塞(既往も含む)
    • 冠動脈バイパス術や弁膜症手術などの開心術後
    • 慢性心不全
    • 大きな血管(胸・腹部大動脈瘤)の手術後
    • 末梢動脈閉塞性疾患(足の動脈が狭窄・閉塞し、歩くと足に痛みやしびれが生じる状態)

    以上の疾患は、通常心臓リハビリ開始から150日の期間、健康保険が適用されます。
    例外として、医師が継続の必要があると認めた場合は150日を超えても健康保険が適用される場合があります。
    費用は1回(1時間)あたり、1割負担:約700円/3割負担:約2000円です。

5ヶ月間のリハビリテーションプログラム

  • 国立循環器病研究センターHPより引用

    ・開始後5ヶ月以内は、週に3回までご参加できます。体力がつく1~2ヶ月後までは週2回以上のご参加をお勧めします。また3ヶ月など短期間でのご参加もお受けしますが、ご高齢で体力低下が顕著な患者様は回復に時間を要しますので、5ヶ月間継続が推奨されます。
    ・患者様が安全に運動できる範囲で、一人一人の患者様に合った運動療法を開始します。また運動能力の向上に応じて運動内容を見直し、さらなる体力・筋力増強を目指します。
    ・準備体操、筋力トレーニング、自転車こぎ(有酸素運動)、整理体操の順で約1時間の運動を行います。またクリニックで行う運動だけでは不十分で、自宅でも継続できるような運動メニューを提案させていただきます。
    ・運動だけでなく、筋肉の素になる『たんぱく質』を多く摂取していただくと、効率良く筋肉が増えます。5ヶ月の間に数回、栄養士との面談を受けていただきます。

    当院のスケジュール表

自宅での運動継続につながる、当院の運動指針

  • 運動の種類による効果の違い

    足の筋力を強くし、安定した歩行を獲得するためには『筋力トレーニング』と『有酸素運動』を両方行うことが重要です。『筋力トレーニング』で筋力を増やし、ウオーキング(歩行)や自転車こぎなどの『有酸素運動』で持久力を鍛えます。
    5ヶ月の間、徐々に筋力トレーニングの種類と歩行時間を増やしていきます。自宅での運動を頑張られた方ほど、成果が上がります。開始当初は『筋力トレーニング』を優先して行っていただきます。筋力が弱い方ほど、始めた頃は筋肉痛がでます。筋力がつくにつれ筋肉痛は減っていきますので、できる限り毎日行ってください。
    筋力がついたら、ウオーキングを開始してください。最初は15~20分を1日1回、その後時間を徐々に増やしていただきます。最終的には軽く息が弾む、汗ばむ程度のスピードで20~30分を1日2回、6000歩/日以上が目標です。

    ※新型コロナウイルス感染流行のため、2020年8月より中断しています。当院での運動処方を公開しますので、自宅での運動継続にお役立てください。

★在宅運動療法の注意10か条

  • 1)運動の種類は早足歩行(さっさと歩く) 、自転車こぎ、体操など。
    2)運動の強さは最大能力の40~60%で行う。
    3)1回の運動時間は30~60分。
    4)運動回数は週3~7回、週2回以下では不足。
    5)自己検脈を覚えて、適切な脈拍で運動する。
    6)60歳を過ぎたらジャンプは禁物、ジョギングより歩行が安全。
    7)必ず準備運動(ウォームアップ) 、整理運動(クールダウン) を。
    8)食直後や起床直後の運動は避け、1時間以上空けてから。
    9)夏は脱水に注意し水分補給を。冬は防寒を心がける。
    10)前日の疲れが残っていたり、体調不良なら無理せず休む。

    ポイントは (1)安全に (2)有効に (3)長く継続!

    さらにワンランク上の、加齢に負けない工夫

    ・平地歩行なら、荷物を重くすることで負荷をかける。
    ・山登り(1時間あたり、300メートルの上昇率なら安全圏内) 、週に1回(70歳以上では5日に1回) 、500メートルが理想的

  • 身近にある山登り・ハイキングコースのご紹介

    金華山(329m)、百々ヶ峰(417.9m)は山登りに最適です

    エエトコタント岐阜市HPより引用

    岐阜市内には健康管理に最適なハイキングコースが多数ございます。

医療関係者のみなさまへ

CR-GNet HPより引用

当院は心臓の病気に関わる施設が連携し、患者様やその家族が必要な情報を共有できるための団体「CR-GNet(NPO法人 岐阜心臓リハビリテーションネットワーク)」に加入しております。
病院、クリニック、フィットネスクラブなど、紹介をご希望の法人・団体様、医療関係者様はお気軽にお問い合わせください。