睡眠時無呼吸症候群

「血圧を下げるため」、「心臓を守るため」に
睡眠時無呼吸症候群を治療します

当院では睡眠呼吸障害の一つである睡眠時無呼吸症候群(SAS)の診療に力を入れております。循環器内科医として、睡眠時無呼吸症候群を治療することで「血圧を下げる」ことと「心臓を守る」ことが目的です。
睡眠時無呼吸症候群は耳鼻咽喉科や呼吸器内科が専門であると一般の人は思われるでしょう。病院などでは主に耳鼻咽喉科が無呼吸検査を担当している場合が多いかもしれません。しかし睡眠時無呼吸症候群は高血圧をひきおこし、さらには将来、心筋梗塞や心不全、不整脈などの心臓病を合併していきます。そのため睡眠時無呼吸症候群と高血圧または心臓病を総合的に管理し、治療できることが理想です。それができるのは当院の強みです。
当院では睡眠時無呼吸症候群を合併している高血圧、心房細動や慢性心不全の患者さんに適切な薬物治療とCPAP療法を行うことで、生命予後の改善を目指しております。

睡眠時無呼吸症候群とは

    • 正常の呼吸

    • 睡眠時無呼吸症候群の呼吸

    睡眠時無呼吸症候群(SAS)は、その名の通り眠っている間に呼吸が止まってしまう状態(無呼吸)が繰り返される病気です。いびきは睡眠時無呼吸症候群の前兆ともいえる症状なのです。
    睡眠は本来、日中に活動した脳と身体を十分に休ませるためのもの。しかし、睡眠中に無呼吸が繰り返されると、身体の中の酸素が不足し、それを補うために身体は心拍数を上げます。脳も身体も断続的に覚醒した状態になり、気づかないうちに大きな負担がかかってしまうのです。その結果、強い眠気や倦怠感、集中力低下などが引き起こされ、日中のさまざまな活動に影響が生じてきます。睡眠時無呼吸症候群には大きく分けて「閉塞性」と「中枢性」の2つのタイプがあり、起こる仕組みも異なります。圧倒的に多いのは閉塞性で、その中には中枢性と混合しているものもあります。

  • 閉塞性睡眠時無呼吸症と中枢性睡眠時無呼吸症

    閉塞性睡眠時無呼吸症(OSA)とは
    上気道に空気が通る十分なスペースがなくなり呼吸が止まってしまうタイプです。睡眠時無呼吸症患者さんの9割程度がこの閉塞性睡眠時無呼吸タイプ(OSA)に該当します。上気道のスペースが狭くなる要因としては、首・喉まわりの脂肪沈着や扁桃肥大のほか、舌根(舌の付け根)、口蓋垂(のどちんこ)、軟口蓋(口腔上壁後方の軟らかい部分)などによる喉・上気道の狭窄が挙げられます。
    中枢性睡眠時無呼吸症(CSA)とは
    脳から呼吸指令が出なくなる呼吸中枢の異常です。OSAの場合は気道が狭くなって呼吸がしにくくなるため一生懸命呼吸しようと努力しますが、CSAの場合は気道は開存したままで呼吸しようという努力がみられません。CSAに陥るメカニズムは様々ですが、心臓の機能が低下した方の場合30~40%の割合で中枢型の無呼吸がみられるとされています。

睡眠時無呼吸症候群と高血圧

  • 睡眠中に発生する無呼吸によって血液中の酸素濃度が下がることで、脳が覚醒して交感神経が働き、夜間の血圧を上昇させます。また睡眠時間も短くなり、睡眠の質が悪化することで自律神経のバランスが乱れて、夜間だけでなく日中の血圧も上昇し、高血圧の悪化に繋がってしまうのです。
    実は高血圧と睡眠時無呼吸症候群(SAS)には深い関わりがあり、高血圧のお薬を服用していても、血圧が下がらない患者さんの約80%が睡眠時無呼吸症候群という報告があります。高血圧症と睡眠時無呼吸症候群はとても合併しやすい関係にあると言えるのです。

    高血圧と睡眠時無呼吸症候群を合併すると、他の高血圧患者と比べて不整脈や心筋梗塞、心不全などの心臓病になるリスクも上昇することが報告されています。
    また自律神経のバランスだけでなくホルモンの分泌も乱れて、体調不良に陥りやすくなります。日中の不調が招く活動量の低下や運動不足が拍車をかけ、肥満を生じ 「糖尿病」や「脂質異常症」などの生活習慣病も合併しやすくなります。「メタボリックシンドローム」になればさらに、血管が障害されて「動脈硬化」が進んだり、血液が固まりやすくなることで「脳梗塞」などの命に関わる病気を引き起こす危険性が高くなります。

  • 不整脈や心筋梗塞など、心臓病のリスクが高まります

    循環器疾患における睡眠時無呼吸症候群の合併率

    本来睡眠中、自律神経は副交感神経優位の状態になり、血圧は低下し、心拍数は下がります。しかし無呼吸によって血液中の酸素濃度が下がることで、心臓は体中に充分な酸素を供給しようと心拍数・血圧を上昇させます。言い換えれば、日中に運動をしている時と同じような負担が心臓にかかるわけです。こうした非常事態が毎晩、一時間に何回も、放っておくと何年間も繰り返されるわけですから、心臓に蓄積する負担ははかり知れません。睡眠時無呼吸症候群は心臓に負担をかけ、心臓の筋肉がぶ厚くなったり(心肥大)、うまく収縮できなくなります(心不全)。
    睡眠時無呼吸症候群は、高血圧だけでなく不整脈や心筋梗塞、心不全などの心臓病を合併するリスクが高く、睡眠時無呼吸症候群をしっかり治療するのは勿論、心臓病の予防・治療も並行して行う必要があるのです。

睡眠時無呼吸症候群と心不全

  • 無呼吸が心不全を引き起こし、心不全が無呼吸を悪化させる

    閉塞性無呼吸(OSA)は心不全の原因として、中枢性無呼吸(CSA)は心不全の結果として発症し、CSAは心不全をさらに悪化させます。睡眠中、下半身に溜まっていた血液が臥床することで上半身に戻り、のどがむくむことで上気道の閉塞が強まるため、OSA自体も悪化します。心不全ではOSAとCSAの両者を高率に合併し、 OSAとCSAの割合は心不全の進行とともにOSA優位→CSA優位へ変化していきます。

    実際、心不全患者さんの2/3以上に睡眠呼吸障害を合併していることが報告されています。また夜間睡眠中の突然死は致死性不整脈が原因であることが多く、その誘因が無呼吸による交感神経の興奮と考えられます。
    研究によれば、睡眠時無呼吸症候群を合併している心不全患者さんでは、睡眠時無呼吸症候群を治療しないと死亡率が2~3倍高くなることも分かっています。ですから心不全を合併した睡眠時無呼吸症候群の患者さんには積極的に治療を行っていただく必要があります。

「無呼吸かな?」と感じたら早期検査・治療をお勧めします
検査から治療までの流れ

当クリニックでは、検査設備が整っているため、通常他のクリニックでは1週間以上かかるような検査もすぐに対応できます。
検査結果が早く分かると、早く治療が開始できるだけでなく、不安な時間を過ごすこともありません。自宅でできる検査もあります。

  1. 1ご受診

    まずはご来院いただき、いびきや眠気、既往歴などに関して問診いたします。寝ている時のあなたのことはご家族がよくご存じかと思いますのでできれば一緒にご受診ください。問診で疑いがある場合は検査へ進みます。

  2. 2簡易睡眠検査

    睡眠時無呼吸症候群(SAS)の疑いがある場合、ご自宅で検査機械を装着していただき血液中の酸素濃度や呼吸の状態を測定いたします。通常他のクリニックでは結果の説明までに1週間程かかりますが、当院では即日対応ができます。簡易検査で重症であること(1時間当たりの無呼吸の回数が40回を越える)が判明すれば睡眠時無呼吸症候群であると判断され、後述するCPAP療法が保険適用となります。

  3. 3PSG(ポリソムノグラフィ)検査

    1時間当たりの無呼吸の回数が40回以下の場合でも睡眠時無呼吸症候群が強く疑われるときにはPSG検査が必要です。脳波、眼球運動および頤筋筋電図を基本として呼吸、心電図、動脈血酸素飽和度(SpO2)、いびき、前脛骨筋筋電図、体位、体動などの生体現象など詳細なデータを記録することができ、簡易検査よりもさらに詳しく、睡眠と呼吸の「質」の状態を調べる事が出来ます。終夜における睡眠深度、その経過や睡眠中の呼吸および循環の生理現象を総合的に評価し、睡眠呼吸障害の有無につき最終的な診断に用います。 1時間当たりの無呼吸の回数が20回を越えれば、後述するCPAP療法が保険適用となります。

    当院で行うPSG検査のPOINT

    • 入院不要!ご自宅で検査ができます
      通常PSG検査は医療機関に1泊して行うことが多いですが、当院はPSG検査機器のお貸出しを行っており、ご自宅で検査をしていただくことが可能です。
    • 検査結果が7日以内にわかります
      7日以内に結果をお出しすることができますので、検査終了1週間後以降に受診いただき、結果をお伝えします。
  4. 4治療方針の決定

    症状や状況に合った治療方法を医師と一緒に検討します。治療法には「CPAP療法」「マウスピース療法」などがあります。治療開始後は定期的に受診し、治療効果や体調変化を確認します。

睡眠時無呼吸症候群に有効な「CPAP療法」

  • 無呼吸を合併した心不全患者さんにはCPAP療法を積極的にお勧めします

    CPAP治療は物理的に空気を送り込むことで気道の閉塞を防ぎますので、いびきや昼間の眠気などの症状は劇的に改善します。またCPAP治療は無呼吸を防ぐことにより、高血圧の改善、不整脈の減少、交感神経の働きの抑制、糖尿病の改善などにも効果があることが分かっています。
    さらに睡眠時無呼吸症候群患者さんをCPAPで治療した場合と治療しなかった場合の影響を比較した研究データによると、心筋梗塞もしくは脳卒中での死亡率が健康な人に比べて軽症の睡眠時無呼吸症候群患者さんで2倍、重症の睡眠時無呼吸症候群患者さんでは4倍以上でしたが、CPAP治療を受けていた人は軽症の睡眠時無呼吸症候群患者さんよりも死亡率は低く、明らかな治療効果が出ています。つまり、 CPAP治療は心血管イベント抑制効果と生命予後改善効果が期待できます。

  • CPAP療法とは

    CPAP(シーパップ:持続陽圧呼吸療法)とは、機械で圧力をかけた空気を鼻から気道(空気の通り道)に送り込み、気道を広げて睡眠中の無呼吸を防止する治療法です。CPAPは15~20cm位の大きさであるCPAP機器本体と、あらかじめ設定した圧力で空気を送るチューブ、鼻に当てるマスクからなり、睡眠中はこれを装着します。中等~重症の閉塞型睡眠時無呼吸症候群の標準的治療法として広く用いられています。CPAP治療は根本的な治療方法ではなく閉塞を防ぐ対症療法ですので、継続して使い続ける必要があります。また患者さんご本人に合ったマスク・空気圧を設定することが大切です。

    画像提供:フィリップス

    基本的にCPAPの装置は医療機関から患者さんにレンタルされ、ご自宅で毎日使用していただきます。日々の使用時間や無呼吸の改善度合いをオンラインで医師がモニタリングできるシステムを導入しております。機械の保守点検や消耗品などの補充・管理も医療機関や保守会社が行いますが、日々装着する機械ですので、日常の簡単なお手入れはご自身でしていただく必要があります。
    また使っている間にどうしても違和感が取れなかったり、新しい不安が出てきたりした時は通院時に主治医に相談し、その都度改善していくようにしましょう。場合によってはマスクの種類を交換したり、CPAP装置の圧力設定を変更したりすることもあります。
    CPAP治療は、患者さんと主治医が信頼関係を持って二人三脚で進めていくことがとても重要です。

  • 費用

    保険適用後の自己負担金額(診察・検査等の費用を除く)

    CPAP使用料
    1割負担の方 ¥1,350
    2割負担の方 ¥2,700
    3割負担の方 ¥4,050

    健康保険の補助を受けられる仕組み

    睡眠時無呼吸症候群の治療効果を高めるため、また、使用しているCPAP機器の使用料金を健康保険での補助を受けるために、毎月必ず当院を受診していただく必要があります。また当院ではフィリップス(株)テイジン(株) 、メディカルケア(株)の3社と提携し、CPAP機器の管理を委託しております。いろいろな機種にも対応でき、転医後もそれまでご使用されていた機器を継続していただける仕組みをご案内しております。

ASV(Adaptive-ServoVentilator)療法も行っています

ASVはマスク式人工呼吸器(NPPV)の一種で、CPAPに呼吸サポート機能を加えた陽圧換気装置の上位機種です。肺うっ血が原因となる呼吸不全症状(夜間発作性呼吸困難、起坐呼吸など)を有する重症の心不全患者さんに使用されています。
心不全患者さんは速くて浅い呼吸になるのですが、自発呼吸を補助することで深く大きな呼吸になり、呼吸回数や呼吸筋疲労を減らし、交感神経を安定させます。CPAPや酸素吸入に比べてもっとも強力に中枢性無呼吸を改善するため、不整脈死や心不全増悪を予防します。
また運動耐容能改善効果もあり、β遮断薬による薬物治療や運動療法と同様な生命予後改善に寄与します。

マウスピース療法

口腔内装置(マウスピース)によって下顎を前方に出して固定することで閉塞している上気道を物理的に広げ、無呼吸の発生を防ぐ方法です。ただし、中等度以上の睡眠時無呼吸症候群には治療効果が不充分であると言われています。副作用として顎の痛みや違和感がありますが、数ヶ月の使用で徐々に慣れていくケースが大半です。総入れ歯や、ひどい顎関節症の方は使用できません。医科医療機関からの情報に基づきマウスピースを作製した場合は健康保険の適用になります。健康保険適用、3割負担の方でおよそ1万円程度の費用がかかります。歯科医院で実施されているため、当院ではしっかりと睡眠時無呼吸症候群に対する知識と実績がある歯科医院をご紹介しています。